スポンサーサイト

--.--.--(--:--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。





スポンサー広告 トラックバック(-) | コメント(-) | [EDIT]

船長はにんげんを食べることを我慢しているのか、にんげんを食べないことを我慢しているのか?

2012.03.16(23:36)

ひかりごけ (新潮文庫)ひかりごけ (新潮文庫)
(1992/04)
武田 泰淳

商品詳細を見る

 3月6日(火)

 会社にいって仕事をした。
 帰りにドトールへいってずっと武田泰淳「ひかりごけ・海肌のにおい」を読んでいた。「異形のもの」がすばらしかった。
 サボテン(アカーキー)の根もとがどんどんやばい色に染まっていっている。たぶんもうすぐ死ぬんだと思う。ごめんね。


 3月7日(水)

 会社にいって仕事をした。ひとりねこだましをした。


 3月8日(木)

 会社にいった。
 ドトールによって武田泰淳の「ひかりごけ」を読んだ。このなかでひかりごけのように輝いている、奇妙な、あたたかいようにすら見える不気味さはなんだろうと思う。難破した船の船長は死んだ船員の人肉を食べてたったひとりで帰ってきて、裁判にかけられる。

 
 検事 被告は現在、どんな気持でいるのか。すまなかったとか、悪かったとか、人間らしいことは考えていないのか。
 船長 (悲しげなる口調で)答えなくてはいけませんか。
 検事 答えなさい。何ももったいをつけることはない。
 船長 私は我慢しています。
 検事 何を我慢しているのか。
 船長 いろいろのことを我慢しています。
 ―中略―
 船長 私はあの時も、我慢しなくちゃならないと思って、我慢しました。今でもやはり、あの時と同じ気持で我慢しているだけです。



 この裁判に参加しているどのにんげんも、船長がなにを我慢しているのかまるで理解できない。


 検事 お前のやったことは、日本人の尊厳を傷つけることなんだぞ。国威を失墜させることなんだぞ。お前はこんなことをしでかして天皇陛下に申しわけないとは思わんのか。
 船長 ……私には、あの方と私とそう違った人間とは思われないのですが。
 検事 何を言うのか、お前は!
 船長 あの方だって、我慢していられるだけなんじゃないでしょうか。



 わたしはずっと以前にこの小説を読んだとき、ラース・フォン・トリアー「ドッグヴィル」と比較し、「船長はにんげんを食べることを我慢しているのか、にんげんを食べないことを我慢しているのか」と書いたように思う。けれどきっと、この小説ではもっとおおきなことが語られているようにわたしは思う。たとえば、人類はこのとき船長が「なにを我慢しているのか」をわかることができないままいまよりもゆたかな存在になりえるんだろうか。そもそも、ここでわたしが発してしまう「なにを我慢しているのか」の問いのたてかたはただしいんだろうか。ここで重きが置かれている「なにを」という問いかけは船長にとってどれだけせつじつなんだろう。船長は「我慢している」と言うとき「なにを」とは決して語りたがらない。それがかりに語りえないものであるとき、たとえばわたしはどんな言葉を船長にかけることができるんだろうか。ここでは「我慢する」という行為において語ることが必要になってくるように思う。そこで「語る」ことにおいて、それはすでに「言葉」であることは必要ない。そして、それのみがおそらくは小説や文学と呼ばれるものが最後によりかかることができる場所になるだろうと、わたしは思った。




コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://kizuki39.blog99.fc2.com/tb.php/1010-11600344
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。