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石像/リ・オルタール

2009.10.13(18:14)

 わたしは雨のなかげろのような魂を嘔吐し
た。春だった。雨の抜けていく先から順に土
のついた花が降りそそぎ、あのこたちの太腿
を蜜が滴って落ちている。靴先は犬の顔だと
思う。死体の顔を舐めすぎひからびてしまっ
た犬の顔をしている。わたしは残酷になりた
い。できるならば、かわいい女の子の靴先に
はりついた犬を笑いながら踏みつぶせる女に
なりたい。わたしには脈拍がたりない。王国
を失い、せつなさは祝福のふりをしていたの
でそれとわからず、わたしはあなたの目をふ
さいでからひっそりと泣いた。言葉は灰にな
りたかった。膵臓のなかには雪をつめこんで
ほしかった。わたしはそのあたたかさから逃
れるため他人に唾を吐きかけることを覚えた。

   ♪

エドガー・アラン・ポーに捧げられる
            ゆきだるまのうた


真っ白のゆきだるまに
皮膚をはがしてこすりつけたら
いっぱい
黄色くなったよ
わたしあなたの恋人になりたくて
耳をこそいであなたにつけたよ
あなたは虫の羽音を聴くんだね
わたしあなたと恋愛がしたくて
眼と鼻をこそいであなたにつけたよ
あなたは夏の光を見て
シチューのにおいをかぐんだね
わたしあなたともっとおしゃべりしたくて
唇をこそいであなたにつけたよ
でもあなたはつめたい眼をして
なんにもしゃべらず
森のなかにいっちゃったね

   ♪

 わたしの資産は坂をすべり、わたしの家を
燃やしている。わたしはそれを眺める嘴だっ
た。崩れた手はもうもどらない、五本の指は
手ではないんだからと、瓦礫はすさんだこと
を言っている。わたしはまだ愛しているんだ
と思った。夜景は二重になっている。夜の奥
底の夜に似たその場所で、世界の友達はひっ
そりとお酒を飲んでいる。線路は死滅した。
虫は鳴きおえ、人間たちはすでに移動を開始
している。わたしは、それでもまだ変わらず
に美しいままだった。

   ♪

子供たちが集団で手をあげるその横で
わたしは救急に眼をつぶる
わたしの肉が燃えていく
わたしの指先が伸びていく
わたしの声が鼻のなかでもだえている
わたしは
一夜かけて
やっと
ものを見ている
わたしは一夜かけてやっと
燃えのこらなくすむような身体になる

   ♪

 行方不明のひとはいつも卑怯だ。もう怯え
ないですむ、泣かないですむ、そしてわたし
の記憶のなかのこころを深緑に染まった指で
つきやぶらないですむ。わたしは、しまうま
に似た服を着て、まだ赤いままの横断歩道を
渡った。

   ♪

 指をからめたまま歩道を渡れば、赤い横断
歩道も、ちゃんと黒と白に染められる。手鏡
だって、きっと割れる。青い線の女の子は落
下をくりかえしながらも花の前で佇んでいる。
ひねりすぎた首からは血が滴り、女の子の太
腿のあいだを比喩的に濡らしている。それで
も、まだ助かる。

   ♪

泣かないで
わたしがまちがった花をすべて摘むよ
そのあとにきみが
ただしい花だけを摘むと
永遠に約束して死んでゆくならば

   ♪

 わたしの頭蓋骨に真剣な毒素がまわる。そ
れを消そうとわたしはとても長い煙草を吸う。
積みあがった灰花はやがてわたしの洋服をす
べて燃やした。わたしはきみのこころのよう
に裸だ。わたしはひとつの後悔もなく、暗い
押しいれのなかでうずくまる。汗のにじむ耳
に月光に照らされた雪の降る音が響いている。
ならば押しいれのなかは冬だと思う。そして
わたしは爪のなかの塵をとり、自分の乳首を
たいせつにさわっている。

   ♪

ひっぱりあげてほしい
春をかじり
いちばん近い夜を見ている
ひっぱりあげてほしい
きみは本を読みおわったら
わたしの燃えかすを
ひっぱりあげてもいい





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