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Nostalgic Children

2009.05.20(18:38)

 石を線路に投げると草が潰れ、おもいでも潰れた。書きつらねたかったものが手の皮を通して残響になり、心をあたためていたものが虚しさとエゴになって、だから、今日もあたしは戦闘機に撃たれている。
 夜間飛行は昼間飛行よりも安全だ、もぐらの格好をした灯台守は金銀の授受についての約束だけは守ってくれるから、光をいけない方向に向けてあたしたちに血を見せたりはしないだろう。あたしはきみに存在を借りていたのかもしれない。冬茸のように蓮っ葉で、青い氷のように冷徹なあの女の子だけが好きなふりをしていた。からまってもつれた糸をきみのなかに投げこむ、心臓を縛る、そのときめきの瞬間瞬間を支配し、なおかつあたしにそれと理解できるように。
 世界塔はとっくに倒れ、歌姫は喉に釘を刺してしまった。愛がたりなかったのだというたんじゅんな理由。民衆は目をつぶらず、そんなちっぽけな行為が歌姫への愛だと錯覚した。鉄の上にひろがる血をふきとるために帽子をかぶった男の子が自分の服を破った。手伝えよ。紋白蝶のようなその声に魅せられのろのろと民衆が動いた。風音をたてて破かれる衣服、覗いた乳房は膿み爛れ、処女は膨らんだ腹に顔を赤らめた。手伝えよ。けれど誰もが血をふきとることに必死で歌姫の傷の手当はしなかった。誰にも歌姫を殺す意志なんてなかったと思う、その事実が歌姫を殺した。
 倒れた場所が腐った。清められた世界ですべてを忘れたいと思った。そのためにあたしたちは会話を続けた。牛が鳴く朝から星が落ちる夜まで、会話をするふりを注意深くしながら時計のねじをまいた。薬漬けの草木にふれると腕が真っ赤になってしまう。あかねちゃんと一緒にわざと腕を押しつけ、どっちが赤くなれるかの競争。そしてキスをした。お母さんに怒られることを知っている。あたしたちふたり泣きながら舌をからませた。空を割る場所に記憶のなかの戦闘機が走り、あちこちで衝突する。どっちが負けたんだろう、悪い国はどっちだろう、舌がほんの少しちぎれて顎に血、滴る。大破した戦闘機から順に空に向かっていく。甘い蜜色が天国に染まり、夕暮れに犬が浮かんだ。知らないあいだにおうちは完成していた。
 お母さんは弾丸が見つからないと慌てていた。あたしに記憶を埋めこむための弾丸が。とりあえずこれを飲みなさい。お姉さんが持ってきてくれた水は薄緑に光っている。螺旋階段の途中であかねちゃんが水を吐いた。ぴちぴちした魚は弾丸をこめられて死んでいた。パイプを下半身から垂らしたお父さんの影が右翼から覗き、月を埋めていた雲が6月に向かって逃げていく。お父さんのこころはその光の満ち欠けにともないつながったり、はなれたりしていく。魂を失った戦闘機の音が聞こえた。勃起した心臓が蓄音機のなかに隠れ、いけない女の子のふりをする。何かかんちがいをしていた。生まれてから今までかんちがいではなかったことなんてひとつもなかった。屋根をつきやぶり歌姫が落ちてくる。それまでに結婚しよう。うん。来年の6月に結婚しようね。





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