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パラソル

2010.04.15(02:01)

「屋上から飛びおりてください」
「そう、じゃあ、精液をください」
 たった一滴を靴ひもを結びつけてから、いっしょにおりましょう。死にかたが気狂いだから、死にかたが気狂いだと言って怒られた。ひっこぬいたのは犬のしっぽだったし、わたしは森になって腐りたかった。森のなかにはいっぱいになった水がぶくぶくと漏れていて、小さな桜色の草ももうずっと忘れてしまったようで、わたしは、行方不明の荷物になりたかった。わたしにはずっと、靴ひもがたりなかった。
(光を割ってこなごなにくだいて、ひとつひとつ、きみの身体につきさしてみた。「だって、まぶしかったんだもの」。ミニチュアのレストランのなかできみを救うという選択をして、わたしはきみにはほんとうは指輪だって買ってきてあげたかったけれど、雪にはとってがついていたから思わずひねった。わたしはだからきみを愛していることにした。きみを愛していることにすればこの先ずっと楽だって思った。雪のかわりに降るコンクリートのかけらたちは夏みたいにすがすがしくて、きみのぷっつりときれた口先からのびているわたしの靴ひもに、そっとわたしの中指をあげた。)
 ぜんまいじかけでいいって言うからわたしはきみが好きだよ。きみがねじをまいてくれたなら、わたしはわたしのねじがとまってしまわないうちにきみのねじをまいてあげるよ。夜のつまったガラス窓からいっしょに花火を見て、見慣れない屋上を水平にした。たくさんの本たちは犬のように従順だけれど、しっぽのとれた犬はわたしをいつもうらんでいた。きみはわたしの背後から前面にかけて並んでいた。ポケットのなかの回線にきみのプロトコルを投げてみたら、きみは爆発をしていなくなっていた。きみの破片が僕の目を潰した。僕はそのとき従順な犬だった。
「爆発したっていいんだよ。だって、僕はきみを好きだと思ったんだもの」
「でもわたしはあなたのそばでできるだけふくらんでいたかった」
「僕はきみの破片を愛しているんだ。きみを愛しているわけじゃない」
「それでもわたしはあなたの全体を愛しているんだよ」
「ならば僕たちは終わりだね」
「終わりだよ。それから、新しい愛が始まるんだよ」
 森にはきみのポケットばっかり落ちていた。きみのポケットばかりいちいち拾っていたから、僕の顔面はすばらしくポケットだらけになって、もうかんたんな涙すら流れなかった。きみはあばずれなふりをして塩を舐め、わたしはきみに優秀なミネラルを送ろう。酸素を求めようとして、きみがあばずれだってことに気がつかなかった。雪をひねってばかりいたから、空は大地みたいだったし、大地は反射された月みたいだった。圧縮された空間にかもめが飛びかい、その斬空に投射された月を見るだろう。よく狙って弓を射る。わたしはきみがかつていた場所に弓ばかりを射て、愛をそそぐのを忘れた。愛はドーナツのまんなかにあった。わたしはそこを食べそこねて、プールに行ってしまった。わたしはいつもきみと塩素を比べてばかりで、ほんとうに塩素の気持ちを考えたことがなかった。きみはそのことをいつも秘密裏に怒っていて、塩素の気持ちを考えることができない僕はきみの気持ちをいつまでも考えることができないから僕たちはわかれたままだった。わからないよときみは言った。わたしはあなたに塩素になってほしいなんてひとことだって言わなかった。でも俺はそのままじゃいけないって思ったんだと僕は言った。俺はこのままじゃきみにふさわしくないって思った。だから俺は塩素になりたかった。きみにとっての塩素になりたいって。わからなかったんだ。俺は俺がきみに愛されるわけがないって思った。知らなかったんだよ。俺がきみを愛しているとき、きみが俺以外のひとを愛しているということがありえるなんて、俺はほんとうに知らなかった。知らなかったんだよ。
「精液がついた赤いパラソルたちが玄関に群がり、そのくらげみたいな姿をわたしたちに見せていた。雪が降ったあとの太陽は夏に溶け、先に走っていくひとたちの姿を追いこそうと、屋上を飛んだ。屋上の先にきみがいると思った。でもきみはずっとえんぴつをにぎってばかりだった。そこには神様ははんぶんくらいしかいないのに。あるいははんぶんのはんぶん。きみをはんぶんだけ愛するから、残ったもうはんぶんを、愛そうとした。いいよ。あなたの言うとおりに終わろう。終わろう。そしてわたしたちは終わらなかった。終わらないからきみを愛していた。わたしはきみをパラソルたちにのせた。それからがわたしたちの赤い回転だった。





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