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ときほぐされていく魚の肉

2012.04.30(02:08)

 あなたが世界に告げたうそだけが
わたしの名前となる 上澄みを抜きとった
  中身の真空の箱が  あなたの名前となる
燃えない煙草を食べてしのぐ冬の氷と
  覚めない夢を食べてうけつぐ春の光と
そしてあなたと
 わたしは深い深い井戸の真夜中で首を吊る

他者がすべて海星のように見えるんですよと
 言った女の子が救急車で運ばれていく
酸素で満たされた怪物が
 彼女のとなりで僕のかわりに手をにぎっている
おまえ死んじゃだめだよ だって俺おまえと
  暮らそうと思って今日おまえのために
きゃべつ買ってきたんだから おまえが味つけして
 俺が炒めるって言うから俺買ってきたのに
運転手さんこの車どこ向かってるんですか 
  あんたこの車に俺たち乗せてるの忘れてないですか
だいじょうぶですか あんた俺たち乗せたまま
ほかのにんげん乗せにいこうとか思ってないですか
 その信号さっきも通りませんでしたか
その信号さっきも赤じゃなかったですか
俺の目の色魚の身みたいになってないですか
 あんたほかのひと乗せにいっちゃだめですよ
ほかのひとなんか墓んなかしかいないんですから
 
僕が放つ電磁波のかたまりだけが
 この世界を有意にしている 電車のなかの
ひとびとは僕の電波を浴びながら携帯電話を眺めている
そのとき彼らが見ているのは僕の波動であり
  彼らは僕の心臓のボタンを押している
そのなかにはたったひとつ核ミサイルのための
ボタンが混じっていて ボタンのわきで
   僕は救急車で運ばれていった女の子のことを思い
泣いている 井戸の底にいまだ横たわる骸骨たちのため
 夜空の星に手をのばしたひともいた 薄暗い救急車を
明るく照らすために 肉体を光に変えて死んでいった
ひともいた 僕だけがあいかわらず携帯電話を鳴らそうと
躍起になっては椅子に座る あぶない油が僕の
背中をさすり 宇宙にいってしまった母親は
人類のことを考えつづけている
 妹もついていった 星になってしまった
僕は横断歩道の白と黒のあいだに椅子を運び
高く積みあげては牢獄の鍵を探す

毎夜 看守が俺のこころに鍵をかけにやってくる
 女の子は救急車のなかで怪物に食われた
怪物が僕だったら女の子は食べられないですんだのに
  その怪物は僕ではなくその怪物だったから
女の子は食べられてしまって 僕は どうして その
怪物が僕ではなかったのかを考えている
 僕の母親だったものから手紙がやってくる
その手紙が母親だったものの手をはなれた瞬間において
僕はその手紙の内容をすべて知った 僕が
その手紙を受けとったとき 僕は
 すでに死んでいた 問題はない
僕はすでにその手紙を読んでいたんだから
ねえ 宇宙は生きものであふれてましたよ
 わたし以外のひとは宇宙にはだれもいなくて
孤独だとみんな言ってましたけど
そんなことはぜんぜんありませんでしたよ!
この星でつかっていた生きものの定義からすれば
  はずれてしまうかもしれないけど そうじゃない
定義をすれば 宇宙にあるものみんな生きものでしたよ
 わたし 木星にいきましたよ そしてそこは
地球でしたよ そこにはたくさんの まだ骨になっては
いない 死体がありましたよ その死体みんな
 わたしたちでしたよ わたしもいましたよ
あなたもいましたよ あなたの妹もいましたよ
だからわたしは わたしたちみんなもう
死んでいるだということを 知りましたよ


 ――ただにんげんのためのくりかえしへ


救急車に乗せられた女の子は僕たちのために武装をした
 怪物は彼女を食べようとしたけれど 彼女は
怪物を銃で殺した 怪物が死んだから
僕はそのとき 彼女のとなりで銃をにぎった
  ままの彼女を見ていた 彼女の口が動き
僕の真空を満たしていく 木星からやってきた
 死者たちが 救急車のなかにつまって
あどけない笑みを浮かべて弾けていく
きみと僕との関係は死者たちの弾性でいっぱいだ
赤い 信号が色のままで僕たちを染め
 注射器がまぶたのようにまたたいている
わたしきみがきみだって知らなかった
だからわたし きみがきみだって思うようにして
 したらきみ 怪物になっちゃった
怪物じゃないきみもそとにいるんだってわかってた
  でも目のまえにいるのは怪物になっちゃった
きみだけだから きみはきみしかいなかった
だからわたし そのときのわたし醜かった
ただし 僕はきみを運んでいく
 きみがそのうち救急車になってしまわないよう
僕が僕の足で運んでいく
そして怪物は 救急車で運ばれていく
 あのひと助かるといいと思う
死ねばいいんだあんなやつ
  僕たちは黒と白のあいだの椅子に座り
おだやかに木星を目指す
 なくなってしまったにんげんたちの場所を埋めるため
きみの目はときほぐされていく魚の肉になっていく
  光が 僕たちを照らした
たったひとり僕だけが
   きみの魚へ回帰する 





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