書評 スタンダール/赤と黒

赤と黒 (上) (新潮文庫)赤と黒 (上) (新潮文庫)
(1957/02)
スタンダール小林 正

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赤と黒 (下巻) (新潮文庫)赤と黒 (下巻) (新潮文庫)
(1958/05)
スタンダール小林 正

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スタンダールの「赤と黒」をようやく読みおわった。3週間ぐらいずっと読んでいたのだけれど、たぶんこれ読んでいるあいだに5冊くらいべつの本を読みおわった。
「無理しているなあ」と自分でも思う。でも本当の無理はしない。たとえば僕は夏目漱石の「我輩は猫である」のおもしろさがちっともわからず途中で挫折したけれど、「赤と黒」は最後まで読んだ。
フローベールの「ボヴァリー夫人」を読んだときも思ったけれど、こういうふうにナチュラルに小説が書けていた時代のことを思うと、どうにも複雑な気持ちになってしまう。現代文学に比べればものすごくたんじゅんで、理性的で、科学的で、慎重で、そしてとてもおもしろい。

   ◇◇◇

近代文学は何を書くかということばかりが問題とされてきたが、現代文学は何をどう書くかというかまでが問題になっている、ということはよく言われることだ。スタンダールが「赤と黒」を書くにあたり、人物を描写するための批評眼とでも呼ぶべきものが絶対に必要だったはずだ。たとえば、情熱的でほとんど天邪鬼なマチルド(ツンデレ?)が僕は大好きなのだけれど、そこにある種の「ステレオタイプ」という言葉が浮かべてしまう。この小説の人物はたとえばそれぞれの階級や性格の具現者として現れているように見える。
それは僕の小説感からしたら絶対的にアウトなのだけれど(人間は人間的なもののメタファではない)、それが不愉快に感じられないのは、たぶん、この小説が今から170年ほど前に書かれたというその背景、つまりこの小説が今僕らが書いている小説に比べてとても自然に書かれているからだと思う。

   ◇◇◇

「赤と黒」ははっきり言ってキャラクター小説だ。僕は谷崎潤一郎の「痴人の愛」を読んだとき、「これは現代のエンターテインメント小説の書きかたにとても似ている」と思った。「赤と黒」もそうだし、だからこそとてもおもしろい。やっぱり現在の作家には絶対に書けない小説だと思う。現代の小説は古典小説に比べて圧倒的にぎこちない。これは僕らが絶対に自覚しなければいけない問題だ。
テーマ: 書評 -  ジャンル: 本・雑誌
by 桜井晴也  at 16:54 |  書評(外国) |  comment (3)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

Re:書評 スタンダール/赤と黒

こんばんは。
この作品はタイトルは知っているけど読んだ事はないです。
海外の小説は、翻訳する人によって作品の雰囲気が違うとよく耳にします。
家にあると思うし、桜井さんがお勧めされるのでいつか読んで見ようと思ったのですが、父の本なので翻訳が古くて難しそうな気がします。
紹介されてるのも古いですね。
新訳がでていたらいいのだけど。


by fumika 2008/06/18 01:43  URL [ 編集 ]

fumikaさんへ

お世辞にも読みやすいとは言えませんが、でもこういうのは個人的には慣れの問題だとは思うので、古いものでも読んでみるとよいかと思います。
話自体はメロドラマです。

新訳ですが、光文社から古典新訳文庫ででていますよ。ただ、この訳は「誤訳博覧会」とまで言われ新聞沙汰にまでなりました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080608-00000914-san-soci

「誤訳のない翻訳はない」と言われるし、僕としてもどうせ読んでも誤訳だって気づかないので読む側としてはべつにかまわないとは思っちゃうのですけれど。
by 桜井晴也 2008/06/18 18:04  URL [ 編集 ]

Re:書評 スタンダール/赤と黒

今朝、チラッとみたけど、なんだか不思議な感じの書き方の本ですね。
太宰治も敬遠していたけど、読んで見たら普通だったので、「赤と黒」も頑張って読んでみます。
by fumika 2008/06/18 21:34  URL [ 編集 ]
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ある売れない芸人が、支配人に言った。
「絶対に観客に受ける芸を思いつきました」
支配人は言った。
「ほう。それはどんなものだい?」
「舞台の上で首を吊るんです」
支配人はしばらく考えたあと、こう言った。
「だけどきみ、その次の日はどんな芸をするんだい?」

   ◇◇◇

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