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めぐみのいろは、オフィーリアとあんず

2008.09.16(22:07)

死をポケットに入れて (河出文庫)死をポケットに入れて (河出文庫)
(2002/01)
チャールズ・ブコウスキー中川 五郎

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らくだ工務店の「めぐみのいろは」を見にいった。サスペンス要素が入ったコメディと言った具合でなかなか楽しむことができた。
演劇を何度か見るとわかってくるのかもしれないけれど、「人間同士の気まずいやりとり」とか「落ちこんだ動作」とか「苛々しているときの動作」とか、そういうものは「演劇の動作」として標準化されているのだろう。それらはほかの演劇を見ても何となく同じような演じかたをしていられるように感じられる。おそらくそこが演技というもの、演劇というものの体系的なものなんだろう。本谷有希子の「ファイナファンタジック~」はそこにややオタク的なものを持ちこんで若干崩していたように、今思いだせば感じられる。
体系的なもの、歴史的なもの、演劇としての土台となるもの、もちろんそれはとても大事なことだ。けれど本当におもしろい、そしてまっとうな演劇はそこをきちんと踏まえた上であえてそこからはみでることをするのではないだろうか。
「これはタイトルが失敗だろう」と思ったけれど、帰り道電車で「めぐみって消防団のことも意味しているんだろ。だって、昔消防団のことを『め組』って言ったじゃん。『暴れん坊将軍』で見たよ」と友達が言っていて、「なるほど!」と衝撃を受けた。僕は鈍いのでダブルミーニングとかは一切気づかない。しかしそれでもこのタイトルは失敗だろうと思う気持ちは変わらないけれど。
あとまったく根拠はないがこの演劇を作っている人は西川美和の「ゆれる」とかがとても好きなんだろうと見ているあいだふと思った。

渋谷に行ったら駅前のビルに「中原昌也」と「高橋源一郎」の文字がでかでかと書いてあってびっくりした。Bunkamuraドゥマゴ賞のニュースだ。中原昌也は「あらゆる場所に花束が……」と「名もなき孤児たちの墓」を読もうとしたけれどどちらも結局最後まで読めなかった。だからたぶんあんまりおもしろくなかったのだろう。今回の受賞作は小説じゃなく「中原昌也 作業日誌 2004→2007」というただの日記なのだけれど、噂に聞くかぎり割合おもしろそうだ。

http://www.bunkamura.co.jp/bungaku/winners/index.html

しかし高橋源一郎の選評の文章がとても下手くそで味わい深い。ただどうして本当に下手くそに書くことができないのだろう。本当に下手くそに書こうとしたら本当につまらなくなっちゃうのだろうか。ブコウスキーの文章もとてもさばさばと適当そうに書かれているけれど、読んでみると実はけっこう良い文章なのだと知れる。「こういう類の良い文章もあるのか」という新鮮な驚きだ。
でも、高橋源一郎がそっちのほうにシフトしていくのは正直どうなのかと思っている。
なお、言っていることは15年ほど前からあまり変わっていない。全文を引用する。



「小 説 で あ る」

選考委員 高橋源一郎

おれの(最近の)小説の定義は以下の通りである。

(1)人間が出てくる。
(2)その人間が、わけのわからないことをいうか、わけのわからないことをする。
(3)書いている作家(「その人間」を兼ねている場合もある)にも、「その人間」がなぜそんなことをしているのか、よくわからない(ので苦しい、もしくは悲しい)。

 その定義に説得力があるかどうか、おれにはわからない。だが、そんなことはどうだってかまわない。おれが小説だと思えば、それは小説。それで十分。
 かねがね、おれは、おれが小説だと思ったものが、他のやつらには小説と思われないことが多いと思ってきた。その逆もある。そんなの小説でもなんでもないじゃん、というものを、みんながよってたかって、「小説だ」とか「最高の小説だ」とか「これぞ小説」とほめたりするのだ。
 良かった。ドゥマゴ文学賞の選考委員が、おれひとりで。

 ところで、本家のフランス、ドゥマゴ文学賞成立の事情は、おれの好きなエピソードだ。ご存じの方も多いだろう。1933年、レイモン・クノーは『はまむぎ』という、きわめてチャーミングな(でも、わけがわかんない)小説を発表した。
 当時の、フランスのエラい作家たちは、(たぶん、わかんなかったので)、この『はまむぎ』を無視することにした。そんなものはなかったことにしようってことになった。だって、『はまむぎ』について、なにかいわなきゃいけなくなったら、困るからだ。
 そんなことはよくあることだ。けれども、そのことに怒った作家たちがいた。13人も。
 その、おバカな作家たちは、いかにもおバカなデモンストレーションを、抗議行動を、思いついた。
 フランス文学界で最大の権威を誇るゴンクール賞をアンドレ・マルローが『人間の条件』で受賞したその日に、カフェ「ドゥマゴ」に集い、一人100フランずつポケットマネーを出し合って、レイモン・クノーの『はまむぎ』へ与えるための賞を作ったのである。
 これを、日本国の事情に合わせて翻訳してみると、要するに、こういうことではないだろうか。
 ある作家が、すごい傑作を書いたのに、文壇のおエラいさんたちは無視。少なく見積もっても芥川賞十個分の価値はあるぜと思った作家たち13人が怒りのあまり蜂起して、芥川賞を石原慎太郎(日本のアンドレ・マルローといえばこの人でしょう。作家で大臣経験者だし)の『弟よ』が受賞した日に(もちろん、一回受賞しているわけだから、ありえないんですが)、麻布十番のスターバックスに集まり、一人1万円ずつ出し合って「スタバ文学賞」を創設し、その作家に贈ることにした……。
 なんてバカなんだ。文学(小説)なんかに、そんなに熱くなっちゃって。おれはそう思う。でも、小説なんて、世の中の役に立つかどうかわからんもんを、マジメに書いたり、読んだり、論じたりしている段階で、バカ丸出しだ。おれも、そうだけど。
 この一年も、ずいぶん、おれはいろんな本を読んだ。いい本、ダメな本、ちょっといい小説、ちょっとダメな小説、小説のつもりだけど小説になってないやつ……。
 そして、おれの基準で、いちばん小説になっていたもの、最高の小説だったもの、それが、一見、ただの日記にすぎない、聞いたことも見たこともないCDや DVDの膨大な購入リストとグチと泣き言ばかりの、この中原昌也の『作業日誌』だった。文句なし。ダントツである。ついでにいうと、本家にならって、「ドゥマゴ文学賞」というものの基準があるとしても、やはり、この『作業日誌』がダントツだとおれは思う。

 追伸。
 この本の帯に、芥川賞を受賞した川上未映子さんの「芥川賞の賞金ぜんぶ中原さんにあげたかった。もうないけど」と書いてあった。できたら、新しい帯には「中原くんに賞金100万円あげる。おれの金じゃないけど」と書いてほしい。
 おっと、おれの小説の定義には、もう一つあるのを忘れていた。それは、これだ。

(4)泣ける

 おれはこの本を読んで泣いたんだ。中原のために。小説のために。文学のために。人間のために。こんな、悲しくて、不幸で、苦しい本を読ませてくれて、ありがとう。おれ、なんだか、すげえやる気になっちゃったぜ、中原くん。



「ジャン・エヴァレット・ミレイ展」を見にいった。いちばん最初の変なものを描いた絵が写真か絵か本当にぜんぜんわからず、思いきり近づくとようやっと「お、絵だ」と確信できる。その絵自体はそんなに好きな絵だというわけではないのだけれど、その緻密さに衝撃を受け、呆然とする。
名前は忘れたけれど消防士が子供を助けている絵がとても良かった。画面の左半分が強烈にグロテスクな赤に塗られていてぞっとする。母親の目も怖い。
名前は忘れたけれど青いドレスを着ている女の絵がとても良かった。ドレスの青が本当にきれいでずっと見ていたかった。
目玉の「オフィーリア」もきれいで良かった。水死する女の絵なのだけれどこういう絵は案外大好きなのである。「オフィーリア」の前だけ柵が微妙に離されていて何故か間近で見られなかったのが残念だった。本当に何故だろう。
美術館なんてところは基本的に行くべきではないが、いろいろなことを間違った場合には行ってみるのも悪くないのかもしれない。美術の教科書に載っている絵と実際に間近で見る大きい絵はぜんぜん違う。迫力が違う。何故なら大きいからだ。内容はどうでもいいけれど、大きい絵というのはそれだけで偉大なのだ。

そのあとは飲み会で、また暴言を吐いたような気がするけれどあまり覚えていない。僕の友達が「あんず棒サワー」という奇怪な飲み物を頼んだ。棒状に冷凍されたあんずが入った飲み物で、近距離から見ても焼き鳥が入っているようにしか見えない。さらにそれが溶けるともっと悲惨でひき肉が浮いているようにしか見えなくなる。大変おもしろい。あんずなんてロマンティックな果物っぽい雰囲気をかもしだしているけれど実際は肉に似ている。

   ◇◇◇

カフカはアナログの手触りがある。カフカもきっと自分の小説をどこで改行すればいいかちっともわからなかったに違いない。もっとも小説らしい小説はカフカだろう。

   ◇◇◇

横浜トリエンナーレにものすごく行きたい。たぶん行くだろう。
ミランダ・ジュライの作品があるらしいのだ。

http://yokohamatriennale.jp/2008/ja/




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