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爆弾を投げあう人々

2009.05.09(01:51)

 短いお手紙なってしまうこと、どうかお許しください。もう、尖った鉛筆が2本しかありませんの。鉛筆削り器が階下にあるのですけれど、そこまでたどりつくこともできそうになりません。というのも、あたし、階段をおりるのがへたくそで、いつもぎいぎい鳴らしてしまって、必然、お隣でお休みになられているお母様を起こしてしまうことになるのです。嘘。ほんとは蝋燭の明かりひとつで階下まで行くのが怖いだけなの。けれどどうか臆病な女とお思いにならないでください。当局にこんな手紙をしたためているのを見つかったら、あたしの首なんてちょんぎられてしまうのですから。

 あたしは以前、川端先生の「雪国」を拝読したおり、「そんな註なんてつけるのは馬鹿だよ」とつい申しあげました。つまり、そういうことを申しあげることによって、あたしは文学を純粋なものに保とうとしていたのです。清浄なものに保とうとしていたのです。
 けれど、今思えば、それはただの暴力にほかなりませんでした。あたしは、ほかの何かから「何か」を守ろうとしていたのです。そのために、ほかの何かを無差別に攻撃してきたのです。でも、あたし気づいちゃったのです。あたしが守ろうとした「何か」なんて、ほんとは存在せず、あたしの「守ってやろう」という醜くゆがんだ気持ちが、あたかも「何か」が存在しているかのようにあたしを錯覚させてしまったのだ、ということに。
「大人のカタリバ Special」というイベントについて書いたときも、あたしは同じ考えを抱きました。あたしはあの場を現代アートだと見なし、そして「現代アートだという認識」の絶対安全区域から、爆弾をぽいぽいと落としちゃっていたのです。それは暴力なのです。
 ベンヤミンという方は「暴力批判論」という論文の最初のページくらいで「法律は暴力だ」とおっしゃっていました(あたしは全部読んだけれど、最初の3ページしか理解できなかったのです)。たとえば警察の方は犯人をつかまえるときに、いくらか暴力的な方法をおとりになるものだと思います。それが許されるのは、法律、あるいは慣習がそれを許容しているからなのです。法律というのは言葉なのです。体制はあたしたちの暴力、野蛮性を封じるために刑法をつくりあげましたけれど、刑法というのも軟禁であったり首吊りであったり、暴力的なものなのです(あたしはそれがいけないとは申しあげてはいませんよ)。暴力を保証するのは言語なのです。ということはつまり、言語は暴力そのもの、それが言いすぎであれば、暴力的な面があるのだ、とあたしにはどうしても思えちゃうのです。
 あたしは新潮文庫に暴力をふるい、「大人のカタリバ Special」に暴力をふるいました。そして、あろうことか、そういう認識すらなく、あたしは正しいことをやっているのだと思っていたのです。あたしは彼らに知らずに爆弾を投げつけていたのです。
 つまり、あたしは「文学」や「芸術」という旗をかかげ、家々を、草木を、戦車にのって潰してまわっていたのです。あたしは、誰かに何かを優しく語りかけるふりをしながら、その誰かに向かって爆弾を投げつけていたのです。
 あたしには、もう、よくわからないのです。
 暴力の連鎖があるから、戦争はとまらないのだとえらい方はおっしゃいます。もしもあたしが、あたしのまわりの人たちが、あたしが知らない人たちが、おたがいに爆弾を投げあっているのだとしたら、それはもう、戦争なのだと思います。あたしは「文学」という名前を盾にして、戦争をしていたのです。前線には赴かないまでも、後ろのほうの、誰も見ていない、戦況には関係ない、ちいさな、ちいさな戦場で、ぽつぽつと、なんでもないものを守るために爆弾を投げつけていたのです。言葉は目に見えないものです。言葉にはなんのリアリティもないのです。もし誰かがその手に爆弾を持ち、誰かに向かって投げつけたとしたら、「ああ、俺は今爆弾をあの人に投げたんだ。ひょっとしたら、2秒後に爆発してあの人は死ぬかもしれない」と考えることができるでしょう。けれど、その爆弾が言葉で構成されているとき、あたしたちは、もはやその爆弾にたいして何か考えたり思ったりするための手段を失っちゃうのです。
 あたしはできることなら「ねえ、もう爆弾を投げあうのはやめようよ」と申しあげたいのです。けれど、あたしには誰がいつどんな爆弾を投げているのかわからないし、その爆発によってたとえ誰かが傷ついたとしても、どんかんだから、ちっとも、気がつかないのです。



 追伸
 ちいさな爆弾を同封いたしました。あなたのおてもとに届くころに爆発するよう、詳細に時間を設定しました。爆弾の中身は、愛です。




コメント
私なら「爆弾?殺られる前に殺れ。壕にこもって投げるんだ」とか「爆弾?爆発する前にそれに自らの身を投げ出して戦友を守るんだ」となります。すみません、「西部戦線異状なし」と「宇宙の戦士」の読み過ぎです。
【2009/05/16 19:20】 | 上田洋一 #- | [edit]
熱すぎます!
解体する人の役目が良いです。
【2009/05/16 19:49】 | 桜井晴也 #oSfzfPCQ | [edit]
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