スポンサーサイト

--.--.--(--:--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。





スポンサー広告 トラックバック(-) | コメント(-) | [EDIT]

大豆論

2010.04.12(18:10)

クロイツェル・ソナタ/悪魔 (新潮文庫)クロイツェル・ソナタ/悪魔 (新潮文庫)
(1974/06)
トルストイ

商品詳細を見る

 トルストイ「クロイツェル・ソナタ」とプルースト「失われた時を求めて」をいっしょに読んでいて、思ったのは、トルストイとドストエフスキーが書いたのは小説じゃなかったんじゃないかな、ということだった。もちろん、ドストエフスキーはドストエフスキーでひとつの小説なのだけれども、それは、たまたま小説というカテゴリでくくられているだけで、プルーストとドストエフスキーはおんなし言葉でちがうものを書いちゃったんだと思う。たとえば、プルーストのこんな文章がある。

 愛が始まるとき、相手の女にたいして、その女の愛をさそうことができる未知の男としてとどまっていたい、とわれわれは思う、しかし心では強くその女を求める、その女の肉体にふれるよりも、その注意をひくこと、その心に触れることを求める。手紙のなかにいやがらせをそっとしのばせ、その冷淡な女がこちらにやさしさを求めてくるように仕向ける、そのようにして、恋愛は、愛さないわけにも行かなければ愛されないわけにも行かない歯車仕掛のからみあい運動のなかに、的確な技術で、われわれをひきこんでゆく。

 プルーストはドストエフスキーをきちんと継承しているように見える。見えるけれども、ドストエフスキーがやったことは空間の支配だったのにたいして、プルーストがやったことは、時空間の支配だったように見える。ドストエフスキーが物理的な会話によって、手によって、ぐいぐいとその世界をひろげていってしまったのにたいして、プルーストは超能力みたいな悲しいぱわーで空間をひろげて、うっかり、時間まで支配しちゃったように見えてしまう。ドストエフスキーは楽しいけれども、プルーストは悲しい。いつも。
 ドストエフスキーがマキシムになったとき、ドストエフスキーを継承するというやりかたで空間を超えてしまったプルーストにたいして、カフカはドストエフスキーを継承しないというやりかたによって空間をミニマムにおしこんだように見える。カフカの文章のこわいところは、この世界では目の前では起こっていることしか存在しないということをありありと見せつけているところだと思う。貿易センタービルに飛行機はつっこまなかったし、イスラエルはパレスチナ人を殺さなかったし、わたしと会ったひとはわたしのいないところでだけ幸せだった。何かが名づけられたときそれが生じるのではなく、何かが生じたときにそれが名づけられた。カフカが書いたのは「名前のないものたち」だけだった。ニュートンとしてのドストエフスキー、アインシュタインとしてのカフカ、そして、ゴダール「はなればなれに」という映画のなかで、主演の男と女は「わたしたちはいっしょなのに、どうしてこんなにもはなればなれなんだろう」と言った。量子レベルにまで分解されたとき、ようやくわたしたちは目の前のことを見ることができるようになった。日の丸を背負ったひとをさして「日本だ」と呼んでいたわたしたちは、ようやく、「あいつはただの日の丸を背負った男だよ」と言うことができるようになった。そしてたぶん、この世界はそれ以降やりかたを失った。量子にまで分解されたならわたしたちは量子としてほかの量子とうまくやっていく「やりかたではないやりかた」を覚えていなくてはいけないのに、わたしたちはニュートンを理解する程度でアインシュタインを理解しない。小さいから、好きなひとの手に気づくことができなかった。身体と手が小さすぎていっしょに見えちゃっていたから、その手をにぎるにはその身体を抱きしめるしかなかった。たとえばそういうやりかたによって誰かを傷つけつづけるのなら、わたしたちはテロリストだった。
 コルク張りの部屋に閉じこもりたったひとつの小説を書きつづけたプルーストは、1922年に死んだ。その2年後にカフカは死んだ。そのあと、わたしたちは何かを書いたんだろうか。ガルシア・マルケスはカフカとドストエフスキーのちょうどまんなかに立ったように見える。そのまんなかはとても目立つ場所だから、みんな、マルケスを讃えた。代表者はまんなかに立つ。でももうまんなかなんかない。決して。まんなかしかないなら、それはもうまんなかじゃないんだって、きみはいつも言っている。耳がただれている。

 大豆がおいしい。畑の、にく!




コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://kizuki39.blog99.fc2.com/tb.php/794-5e148144
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。