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彼にとって、神が存在することの証明は音楽ひとつで十分であった。

2010.04.28(21:42)

国のない男国のない男
(2007/07/25)
カート ヴォネガット

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 テーブルにピストルがある
 それは裏切りの花なのか
 それは約束された重量なのか
               友川かずき/ピストル


 だれかのしあわせではなく、よろこびでもなく、だれかのかなしみになりたいと強く思った。わたしはそのひとがしあわせやよろこびであれるように、そのひとを強くかなしませてあげたいと強く思った。こころできつく泣けるようにそのひとをかなしませたい。同時に自分も深海の魚のように深く沈んでいくようなやりかたで、だれかをぎゅっとかなしませてあげたい。抱きしめるくらいならかなしませてあげたい。わかたれた指と指ならきりとってしまいたい。けれど痛みに泣かないように、痛覚のないかなしみで、そっときりとってしまいたい。あの子は現実だった。ほんとうにほんとうに現実すぎたから、わたしはわたしが現実ではないことを知った。わたしは現実になりたかった。そのためなら淡い色の犬に噛まれてもいいと思った。痛みは指先のような感触でわたしの首に残ればいい。現実も淡いままわたしの脳みそに降りそそげばいい。そこはたとえば世界と呼ばれ、月を眺める孤島のような美しさでわたしの眼球に浮かぶだろう。しあわせではないかなしみも、かなしみではないしあわせも、もうずっと思いつかない。もうずっと。

   ◇◇◇

 トルストイ「クロイツェル・ソナタ」を読んで「こんなくっだらないことで100ページも悩んでいるなんてばかだなあ。おもしろいなあ」と思っていたけれど、ヴォネガット「国のない男」を読んでいると「こんなまじめなことを100ページもくっだらなく笑っていてばかだなあ。おもしろいなあ」と思う。この2冊はさいきんわたしが読んだなかでいちばんおもしろいと思った本だけれど、トルストイは死んだし、ヴォネガットはこのまえ死んだ。

  もしわたしが死んだら、墓碑銘はこう刻んでほしい。

  彼にとって、神が存在することの証明は音楽ひとつで十分であった。
          カート・ヴォネガット/国のない男

 
「進化はとても創造的だ。なにしろ、そのおかげでキリンがいるのだから」
 ヴォネガットはわたしにそう言ってくれた。
「人間主義者はイエスのことをどう考えているのだろう? すべての人間主義者と同じで、わたしもこう言う。『もし彼の言ったことが正しく、また純粋に美しいのであれば、彼が神であろうがなかろうが、関係ない』」
 ヴォネガットはこうも言った。
 わたしもきみが純粋に美しいのであれば、きみが蝿であっても関係ないと思う。でも、この世界に美しいものはあんまりたくさんは、ない。たとえば「マタイ受難曲」よりも美しい音楽があんまりたくさんないくらいには、ない。




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