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「君のた、めいき/には/劇薬が混じっている」

2010.06.08(21:46)

黒田喜夫全詩 (1985年)黒田喜夫全詩 (1985年)
(1985/04)
黒田 喜夫

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音速平和音速平和
(2005/11)
水無田 気流

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絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)
(2005/04)
谷川 流

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 谷川流「絶望系 閉じられた世界」を168ページまで読んだ。わたしはライトノベルの熱心な読者ではないけれど、わたしが読むライトノベルの主人公はみんな一人称が僕で、虚無的で、なにごとにも動じない男の子ばかりなような気がする。そうして、まわりのひとたちが「あいつはどこかふつうじゃないぜ」とか暗に明に文章のあちこちで主張している。たとえばわたしが読むライトノベルにはたいてい殺人鬼がでてきて、とくに理由もなく善良な一般市民がものすごーく残酷なやりかたで殺されて、それで、たいてい、そういうことが起きても主人公は動じなくて、やっぱり、まわりのひとたちが暗に明に「なんで平気でいられるんだろう」とか文章のあちこちで主張している。それで、だいたい彼らのかたわらには美少女で暗い過去を持ったしかも莫大な権力を持った女の子がいて(玖渚友は美少女じゃないのかな)、だいたい、彼女の理解者、というかいっしょにいられるひとはその男の子だけで、だから、やっぱりまわりのひとたちは暗に明に「なんであんなあぶない女の子といっしょにいられるんだろう。やばすぎるぜ」とかなんとか文章のあちこちで主張している。
 彼らのありかたがひとつの理想と見られるのは、たぶん、彼らがまったく関係しないままにいっしょにいるからだと思う。「絶望系 閉じられた世界」という小説には過去がないと思う。過去に彼ら彼女たちになにがあったか、なにかがあったらしい、ということはすこしずつ語られるけれど、それはすでに過去ではなくて、過去のふりをした現在でしかないと思う。過去の堆積があっておそらく現在というものがあるとするならば、彼らの語る過去は現在の堆積(わずかなページ数に書かれるほとんど意味のないやりとり)でしかない。彼らがそこにいるのは、そこにいられる理由とは、彼らがそこにいるということでしかない。カフカやサルトル、ベケット、それだけじゃなくて、もしかしたらほとんどすべての小説が存在の密度を高めるということで描きだしたそれらのありかたを、この小説は存在の密度を低めるというやりかたで描いているのかもしれなかった。カフカも、ベケットも、「狂っている」「壊れている」という言いかたをしなかったと思う。カフカもベケットも存在の密度を高めればひとが狂い、壊れていくことをわかっていたんじゃないかと思う。名づけるほどもなく自然に。現在しかなければ、にんげんはたやすく壊れ、たやすく狂っていくように思う。現在しかなければだれがだれがだれを殺そうと知ったことではないんだと思う。でも、わたしはたまには「出会いにいけばいいのに」と思う。わたしはいつも出会うのがたまらなくへたくそだけれど、出会いにいけばいいよと思う。

   ◇◇◇

 わたしはじゅんぶんがくがすきでらいとのべるやえんたあていんめんとしょうせつなんてしょうじきにいえばそのほとんどがくずだとおもっているさいあくなにんげんでそんなやつはうまにけられてしんじゃえばいいのにとおもうことがときどきやっぱりあるけれど、たとえば、「純文学が読まれない!」と言ってなげいているひとは「絶望系 閉じられた世界」や「悪魔のミカタ」や西尾維新を読んでいるひとに全力でアゴタ・クリストフ「悪童日記」を手わたしてみればいいんじゃないかと思う。いま、わたしは水無田気流「音速平和」を読んでいて、このダサカッコいい詩集はなんだろなとやっぱり思う。


今日もケイタイデンワで
みんな
虫になっていく
虫になってみる
虫の思想の羽音が
青い闇の沸点を突き抜け

「言葉が電磁波とともにフルエルノダ」

世界がカオモジで記載される夜に
私は君とどの地点で待ち合わせよう?

シイピイユウシュウハスウ速度よりも速く流れる
このナニヤラネンチャクシツノヨウナモノを
どの時点で説明しよう?

君の手にしたクリティークと
私の手にした温度計の数値は
どの基点で対話しよう?

(ナゼナラ世界ハ アシタ終了スルカモシレナイ)
(ナゼナラ私ハ アシタ消失スルカモシレナイ)

日付が変わり
君の電球が点モル
私はそこを目指すのを止め

振り返ると

世界が反転していく
セカイがハンテンし、テイク
文字のあいだを言葉が反転していく
そして鮮やかに回転していく
音と意味とガ回転シテイク

ソノ刹那
コノ瞬間ダケ可能ニナル
入レ替ワル
私ハ君ニナル
一瞬ダケ、君ニナル
気ヅカレヌヨウ君ニナル
            ――水無田気流/電球体



 わたしは紙一重だと思うんだけれどな。水無田気流も谷川流も「エヴァ」も、ほんの紙一重の差でばらばらに切りさかれていると思うんだけれどな。だって、わたしもだれも、たとえば、燃えるきりんがほしいだけだから。


燃えるキリンの話を聴いた
燃えるキリンが欲しかった
どこかの国の絵描きが燃やした
ながい首をまく炎の色
その色が欲しかった
藁でつくった玩具の馬に火をつけた
にぶく煙り
残ったのは藁の灰の匂い
それから外に走りでた
泣いているのは悲しいからじゃない
燃えるキリンが欲しいだけ
だが見えるのは渋に燃える桑の葉
死んだ蚕をくわえる桑園から逃げる猫
我慢ができない
世界のどこかでキリンが燃える
燃えるキリンが欲しいと叫びだした
           ――黒田喜夫/燃えるキリン



 すごいよ。このひと、どれだけ燃えるきりんが欲しいんだよ! こわいよ、このひとこわいよ!




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