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あなたのなかには深くてひろい空洞がある

2011.12.27(23:30)

ゴドーを待ちながら (ベスト・オブ・ベケット)ゴドーを待ちながら (ベスト・オブ・ベケット)
(1990/10)
サミュエル・ベケット

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 12月19日(月)

 月曜日だった。仕事がいそがしかったのかどうかすらも覚えていない月曜日だった。あまりにも月曜日すぎたので「月曜日かあ」と思った。月曜日が群れをなしてやってきたのかと思うほどの月曜日だった。世界は月曜日によって焼かれ、うつくしいつららのように硬度を増してやがてぽっきりとおれていった。
 会社にいって帰った。


 12月20日(火)

 火曜日だった。火曜日はあまりにも火曜日すぎたためにわたしは「きみって火曜日だね!」とさけばざるをえなかった。火曜日は頬を赤く染めながらそっとわたしの手をにぎりしめて「あなたのなかには深くてひろい空洞がある」と言った。けれどわたしにはその言葉の意味をわかることができなかったし、たとえわかったとしても、それはわたしがこれから生きていくその連続的な行為のどの断面においてすらなんの意味も持ちえないだろうと思えた。だってそれは火曜日だったんだから。
 会社にいって帰った。


 12月21日(水)

 水曜日だった。つまり会社の忘年会だった。
 SAさんは酔っぱらっていて、わたしはへらへらしながらちっともお酒を飲まなかったから酔っぱらってはいなくて、なりゆきでタクシーで送っていった。タクシーの運転手さんが「駅のどちらがわ?」と訊いてSAさんが「はんたいがわです」と答えて、でもSAさんは酔っぱらっていたからうそだった。「ここらへんです」と降りたところはSAさんが酔っぱらっていたからちがう場所だった。風がびうびう吹いていて、そこはもうだれも知らない暗い場所だった。「歩いて帰れますよ」と言われたから歩いていたけれど、SAさんは酔っぱらっていたから歩いても歩いてもどこにもたどりつけなかった。わたしたちのわきを車がぶんぶんと通っていった。途中でファミレスでトイレだけ借りようと思ってSAさんを放りこんだらトイレからでてこなくなった。なかで死んでいてはたいへんだと思ったから隙を見て女子トイレのなかに何度も潜入してはドアをたたいた。声はすこしずつうつろに、短くなっていった。「このままでは死んでしまう!」と思ってなにもしなかった。ファミレスのなかでなにも頼まずにぼうっと座っていた。自分の爪や携帯電話の表皮ばかりを何分も見つめつづけていた。何度見てもそれは自分の爪だったし、それは携帯電話の表皮だった。それはゆたかな時間だったんだろうかとあとになって考えた。わからなかった。午前2時になってファミレスが閉店して、わたしはトイレのドアをたたきつづけた。へろへろになってでてきてくれて、ようやくSAさんはSAさんをとりもどしていて、タクシーを呼んで彼女の家まで帰った。わたしはそれからタクシーを呼んでわたしの家まで帰った。午前3時だと思った。「さむい」と思った。冬はさむいなあ。


 12月22日(木)

 よっぽど理由をつけて寝ていようかと思ったけれど、会社にいった。
 どこで聞きつけたのか知らないけれど、YTがすっと横にきて「タクシーおつかれ」と言って去っていった。なんなんだろうと思った。でもそれはだれにもわからなかった。サミュエル・ベケットにだってわからないだろう。


エストラゴン どうして眠らしといてくれないんだ、いつも?
ヴラジーミル 寂しくなったんだ。
       ――サミュエル・ベケット「ゴドーを待ちながら」





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